私が10年近く住んでいた日本を離れる理由 ―国内在住外国人からのメッセージ

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私が10年近く住んでいた日本を離れる理由ー国内在住外国人からのメッセージ

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先日、大学院の先輩は長らく住んでいた日本とさようならして人生の次のステップを踏み出すことになり、先輩の送別会を兼ねて久しぶりに日本に暮らしているメンバーが集まって励まし女子会を開催しました。

卒業してから、様々な現実要素で自分の人生の拠点を中国にすることに決め、あっさりと帰国した同胞が多ですが、このメンバーは折角身に着けた日本語を手放したくなく、日本で就職して暮らすことに執着してきました。

もともと国が一緒で出身校も同じで、接点が多い私たちはもっと会っていたはずですが、多忙な日々に追われてなかなか集まらないので、今回先輩の送別会をきっかけに久々に顔を合わせられました。

学生時代とそんなに変わらないが、すっかり落ち着いた大人の雰囲気になったのは皆さんと会ってすぐの印象です。
早速近況報告の時間となりました。

今回主役は先輩のZさんです。
彼女は中国の大学卒業後来日し、語学学校を経て有名な国立大の大学院に入学しました。
論文と実習を終えて新卒で都内の某大手IT企業に就職でき、人より極めて優れた才能というより地道にコツコツ努力するタイプで、日々の努力が実った結果、順風満帆に就活できた彼女は我々後輩が慕う先輩です。
職場で外国人であることで差別を受けたこともあると以前ウィーチャットでお話を聞いたことがありますが、それでも彼女は自分のキャリアアップのために、同期が一人一人辞めていくのを見ても自分なりに耐えて来たようです。
「この会社で学べそうな知識を身に着けてないまま辞めてしまうのはもったいない!」と彼女が言ってた話はとても印象的でした。

日本の会社での悔しい思い

最初は雑用ばかり押し付けられていて、不平を上司に訴えた結果、上司から明らかに彼女のキャッパを超えた大量の仕事を命じられてヒエラルキー意識が強い保守的な日本大手企業に置かれても、言うことをちゃんと言うし、上の者の言いなりになるタイプではありませんでした。

四年も今の会社に勤めていたし、理不尽なことを訴えても率先して抵抗しようとしても結局強権の圧には勝てない。おかげさまで、自分の忍耐力はかなり鍛えられた。多分この先どんな困難があっても軽やかに乗り越えられる気がする。

確かに、日本の保守的企業にはこういう癖がある。グローバル社会に合わせて自社も外国人を積極的に採用し、社内の多様化と活気を取り入れようと意識している会社が多いものの、折角採用した外国人でも日本人を基準にして評価する。
そして、外国人が持っている日本人と異なる価値観を見られたら、「これって中国人(外国人)が…」と頭ごなしで批判する。そういう人ばかりではないと反論しようとする日本人の方がいらっしゃると思いますが、残念ながら、会社で強権を手にしているのはこういう保守派の方が多い。

日本でいい思い出も悪い思い出も沢山あると思いますので、こんな長くも暮らしていた日本といきなり別れを告げ、アメリカに行く決意を下した経緯等いろいろ聞いてみました。

―卒業して日本に就職してちょっと自分が思ったのと違うと思う時はどんな時ですか?
日本で毎日長時間の労働を押し付けられて、平日残業、たまに休日出勤。
人生を楽しく生きるために仕事をしているのに、逆に仕事にほとんどのプライベートの時間を奪われることになって、仕事のために生きてるという悲しい気持ちになる。
偶に昼休みに、晴れの日、会社の近くの公園を通り過ぎた時に、公園の芝生に本を読んだり、画を描いたり、友達と楽しそうにおしゃべりしたりしている人を見つけたら、ランチタイムでお店が混んでいて食事が出たのが遅かったせいで、午後の出勤に間に合わせるため急いでいる自分のことを惨めに思うもん。
ほとんどのサラリーマンがこんな状況に置かれていると思うが、自分も覚悟して会社に勤めた訳だし、やはりいつかこの朝から晩まで仕事漬けの日々から抜け出したい、解放されたいと思ってる。
定時という決まった枠があるのに、なぜそれ以上の仕事を押し付けられるか?
その定時を守れなければ、定時の存在意義が分からない。
と思いながら現状を打破して新しいスタートを切る勇気を持っていない。人間はこういうもんだよね?!
いくら現状に文句があっても、いざ変えようとしたら、未知の未来への恐怖で現状の良さを探し始めて変えなくてもいい理由を自分に言い聞かせ始める。結局何も変えられない。
アメリカに行くのは臆病でなかなか動けない自分にとって一つのきっかけですね!

永住権申請の失敗

―アメリカに行ったらもう日本には帰って来ないですか?
―帰って来ないですねっていうか帰って来れないんだ。

―記憶が間違っていなければ、先輩はもう日本に住んで10年もありますよね?
―20歳から中国のプロジェクトで3年生と4年生の頃に日本の大学に編入されてからずっと日本だよ、
今年29歳で、ほぼ10年も日本にいるね。

―今回日本を離れることはやはり寂しいですか?
―10年も、しかも自分の人生にとって最も輝かしい青春時代は日本で過ごしたから、自分にとって日本は外国だという認識もうほぼないと言ってもいいほどこの国に馴染んでいると思った。今回の別れは一生の別れだと思うと、虚しい気持ちになりますね。

―来週からもう日本にいないですか?あと1週間もないですが、やり残したことがありますか?
ー人生の美しい10年も日本にいたので、何かの形でこの国とつながりを持ち続けたいと8ヶ月くらい前に永住申請をした。東京品川で申請書類を出したが、いまだに降りていない。同時に永住申請した自分より学歴が低く年収も少ない知り合いは申請して5ヶ月くらいの時に既に永住を貰ったのに、日本の法に従順し、真面目に仕事してしっかり納税している私は未だ降りてない。こういうのが運もあるから、日本とのご縁はここまでとのことか?!
残念だけど、しょうがないね。まぁ、アメリカで何があってももう逃げ道がない、今以上に頑張るしかないという励ましにもなった。

日本の住民税制度に愕然!!!

―10年近くも住んでたから、荷物の引き上げや書類提出等いろいろ大変そうですね?
―もったいなくても時間がないから、大半は捨てたけど、どうしても捨てられないものを整理して船便でアメリカに出した。
大変だけど、引越しはこういうもんだから覚悟をしてある。しかし、意外だったのは日本の住民税制度。1月1日は日本に住所があったら、仮にその年に一日しか日本に住んでいなくてもその年の6月から翌年の5月までの住民税を支払わされる。ちょっとおかしくない?住んでもいないのになんも利益も得てないのに何で払い続けなきゃいけないんだとムカッとしたよ。日割り計算とかもっといい方法があるでしょう?
 いままで天引きで毎月2万くらいも日本政府に貢献してきたのに、未だ報われていないこの段階、更に一括で25万弱取られた。ただでさえ色々お金がかかる今、住民税一括の上乗せでかなり厳しい。

私が住民税のこの仕組みにあまり詳しくないので、帰って調べてました。

住民税は前年の所得に基づいて、1月1日に日本に住所を有していた人に課税されます(前年課税原則)。そしてその年の6月から翌年5月にかけて毎月納税していくことになります。
例えば、先輩の場合に、2019年の1月1日以降に日本から出国することになっている。リセットされるのは次の1月1日、つまり2020年1月1日なので、2020年の5月までは住民税を払い続けなければならない。出国後の納税は納税管理人に頼むか、最終給与から一括で翌年の5月分まで天引きしてもらうか二つの方法がある。

どうせ避けられないから、先輩は最終給与から一括で天引きして貰ったかな。

―日本に沢山名残惜しいことがあると思いますが、逆にやっと日本から離れるんだと思うことがありますか?
―そりゃいっぱいありますよ。必死に空気を読まなくて済むし、もっと自由に生きられるとか…一番うれしいのは花粉症から解放できることかな(笑)

終わりに

この10年近く生きていた場所に抱えている感情が複雑。
あいうえおから日本語を学び、20歳で勇気と夢を持って日本に尋ねて、その後日本を好きになり、日本に住むことに決め、最初来日した頃は10年も日本にいると思ってもなかったでしょう。日本企業に勤めて日本の国籍にならない限り、いつかこの国を離れると心構えていたかもしれないが、この別れはこんなにも早く訪れたと思ってもなかったでしょう。

この国で積み重ねた心に残る思い出はいつまでも消えないと思うし、思い出がある限りこの国とのゆかりはいつまでも失うことがないでしょう。