最近、用があって久しぶりに渋谷に行った。そこで、私が日本でテレビ番組でしか見たことのない光景が目に入った。それは「伝説」のガングロギャル。仕事帰りの途中で平然と人ゴミの中で姿勢よく立ち振る舞ういかにも自分の身に包まれているお姫様風の洋服に良く似合うようなロリータガールが頻繁に遭遇するものの、同じ年代に誕生したガングロやコギャルファッションをしている彼女たちはあんまり見当たらない。
そもそも、私の中に生じた疑問はこんな真逆で、一見接点がなさそうな二種類の女性ファッションがほぼ同年代に日本で流行を巻き起こしたのはなぜなのか?
まず、この二種類のファッションの生まれた背景を調べてみた。
ガングロは1990年代後半から2000年初頭頃をピークに、日本の若い女性たちの間で流行した髪の毛を金髪かオレンジ色に脱色し、肌を黒くするというスタイルのオルタナティブ・ファッション。
ロリータ・ファッションは、1990年代以降に日本で流行したファッションスタイルのひとつ、または、それを中心とした社会現象、その愛好者たちによる主義・思想である。
どちらも1990年代以降から流行っていたが、説明文から見れば、ガングロは2000年初頭頃にピークを迎えられたのに対して、ロリータ文化はガングロほど大盛り上がりを作っていないがジワジワ原宿界隈から大きい範囲まで覆っていく。
いずれにしても、1990年代の若者は個性豊かでパワフルだった。
表面に出ている形が違うだけで、とにかく「個」を強調するエネルギッシュなイメージは同じです。
派手に生きよう、個性をアピールしようとある意味で夢の世界に目覚ましていない90年代の若者と比べたら、今の若者はどれだけ現実で素朴な送り方をしているだろうと感極まる。たったの20年で若者の価値観はこんなに変わるんだ。
なんで今の若者はファッションを強調しなくなったでしょうか?
今の若者を見れば、ファストファッションの台頭につれ、個性を際立たせる洋服を好むのではなく、人ごみの中にうまく隠れるような普通なものを望む。
デザインのユニークというより利便性やコスパを大いに重視する。
服装に無駄なお金を使うなら、ちゃんと自分のためになる基礎化粧品や資格勉強やセミナー参加もしくは自分の趣味に注ぎ込んだ方がよっぽど賢明だと悟った今の若者。
私も昔よく新宿ルミネでお洋服を買っていたが、久しぶりにユニクロに行ってみたら買い物はほとんどユニクロで済ましている。ブランド店は自分のコンセプトと個性を持っているので、そこで手に入れたお洋服は家に持って帰って後々気付くのはこの洋服が自分に似合うというより、そのお店に置いた時に感じた雰囲気と合っていた。いざお店から単独に連れだされたら、当初見ていたものとちょっと違う、しかも、他のお店で購入したものと組み合わせにくいことが分かる。
ここであえて強い個性をなくして、何に合わせてもいけるユニクロのようなファストファッションの素晴らしさに感激した。
最近、ユニクロやジーユーのような人と被りそうな服を着るのが嫌がる人がどんどん減ってきて、安価で手入れをそんなにしなくてよい気軽に着れるファッションのほうが良いと思う若者は激増。
お洋服へのこだわりがなくなりつつある今の若者だが、個性を完全になくそうとしたわけではない。そこに潜まれているのは別の理由がある。
SNS社会の発達につれ、一人の若者は同時にいくつかのコミュニティに所属することになり、特定なファッションやキャラクターイメージを確定するよりどこにも馴染めるフリーの身でいたほうが活動しやすいかもしれない。
パワフルに個性をアピールする為、大金を突っ込んで派手なファッションを身に着けても不況が続く世の中に待ち受けてくれるのは凹んでいく財布のみ。沢山の注目を浴びることで身の回りの現実を変えることができない「無力さ」に悟ったのは今の若者だ。
こういうわけで、今の若者は90年代にガングロファッションのようなブーム何も生まれていないのは①ファストファッションの台頭、コスパが良いものを大量に生産・販売する時代がやってきた、②SNSの発達によって若者は同時に多数なコミュニティに所属するようになったことで強い癖を消すことになった、③全力個性を主張しても何も変えられないとより現実に目を向かうことになった等と考えられる。
以上、ガングロの出没からのプチ感想です。